労災申請をすると会社側のペナルティがあるって本当?

労災申請を受けた企業
「従業員から労災申請を受けたんだけど、どうせならうまく誤魔化したいなぁ…。監査が入るって聞くし、本当いい迷惑だぁ…。」
こういった声に応えます。
✔本記事の内容
・労働保険への加入は義務です ・労働基準監督署の監査や再発防止策の提出とか嫌だし、黙ってればいいのでは? |
会社を経営している方はご存知の事と思いますが、
労働基準法では、労働者が仕事で病気やけがをしたときには、使用者が療養費を負担し、その病気やけがのため労働者が働けないときは、休業補償を行うことを義務付けています。
労災かくしをするつもりはなくても、事業主に余裕がなかったり、大きな事故が起きたりした場合には、迅速な補償ができないかもしれません。
あるいは、労災申請をされると再発防止の為に監査が来られて面倒くさい。
会社の評判が落ちる。
などと不安になる方も少なからずいらっしゃると思います。
いつもは従業員側に立って記事を作成してきましたが、今日は企業側目線で記事をまとめていきます。
この記事の信頼性として、厚生労働省のホームページや労働基準法を参考にしていきます。
※本記事は5分程度で読み終わります。5分後には、労災についてより理解が深まると思います。
✎労働保険への加入は義務です

基本的に労働保険への加入は義務づけられているので、強制適用事業場以外の事業場ではない限り強制加入となります。
●加入義務のある事業場
常勤、パート、アルバイト、派遣等の名称や雇用形態にかかわらず、労働者を1人でも雇っている事業場は加入義務があります。
●労働者とは?
職業の種類にかかわらず、事業に使用されている者で、労働の対価としての賃金が払われる者のことをいいます。
※5人未満の労働者を使用する個人経営の農林水産の事業については、強制適用事業場から除かれています。
※強制適用事業場以外の事業場でも、要件を満たせば労災保険と雇用保険に加入することができます。
(任意加入制度)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/dl/leaflet01a.pdf
厚生労働省 「労働保険リーフレット」より
労災について、知りたいのに労働保険と何が関係あるの?と思われた方もいると思います。
労働保険とは、労働者災害補償保険(一般に「労災保険」といいます。)と雇用保険とを総称した言葉です。
保険給付は両保険制度で別個に行われていますが、保険料の納付等については一体のもととして取り扱われています。
下記は労災保険法を一部抜粋したものですが、労災が発生した場合企業は様々な補償が発生します。
●労働基準法(抄)
(療養補償)
第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、
その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
(休業補償)
第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために
賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の
休業補償を行わなければならない。
(障害補償)
第七十七条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治つた場合において、その
身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表
第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002c04q-att/2r9852000002c0oj.pdf
厚生労働省 「労働基準法(抄)と労災保険法(抄)」より一部引用
労働基準監督署の監査や再発防止策の提出とか嫌だし、黙ってればいいのでは?

労災隠しは犯罪です。
が、そんなことは当然知っていると思います。
私の直上が、一番嫌がっていたのが監査です。
労災発生原因の確認だけでなく、職場環境の視察・再発防止策の提出を求められると仰っていました。
しかし、私の時は労災発生原因について、直上(主任)と上司(部長)の3人で面談・事実確認をしつつ労災申請の書類を作成しただけでした。
申請・労災支給後も2~3ヶ月会社にいましたが、労働基準監督署の監査も再発防止策の提出もなかったと上司から聞いています。
そこで、どんな時に監査が入るのかなど調べてみました。
労働災害を発生させてしまった場合、災害の原因を分析し、再発防止対策を策定して実施することが重要です。
また、場合によっては、労働基準監督署から労働災害再発防止書等の作成・提出をお願いすることがあります。この場合、労働災害再発防止書等の様式はその都度労働基準監督署からお示ししますが、以下に労働災害防止対策書の様式の一例を掲載しました。労働災害を発生した事業場におかれては、労働基準監督署からの求めの有無にかかわらず、当該様式等を使って災害原因の分析、対策の策定などを実施するようお願いいたします。
厚生労働省 「労働災害が発生したとき –労働災害再発防止対策の策定・実施-」参照
労働災害再発防止対策の策定・実施については、場合によるみたいです。
私の時に無かったのも納得です。
労働基準監督署の調査(臨検監督)には、以下の通り4種類に分類されます。
1) 定期監督
最も一般的な調査で、当該年度の監督計画により、労基署が任意に調査対象を選択し、法令全般に渡って調査をします。原則としては予告なしで調査に来ますが、事前に調査日程を連絡してから行う場合もあります。
2) 災害時監督
一定程度以上の労働災害が発生した際に、原因究明や再発防止の指導を行うための調査。
3) 申告監督
労働者からの申告(告訴や告発)があった場合に、その申告内容について確認するための調査。この申告監督の場合、労働者を保護するために労働者からの申告であることを明らかにせず、定期監督のように行うケースと、労働者からの申告であることを明かして呼出状を出して呼出す場合があります。
4) 再監督
監督の結果、是正勧告を受けた場合に、その違反が是正されたかを確認するためや、是正勧告を受けたのに指定期日までに是正報告書を提出しなかった場合に、再度行う調査。
労働基準監督署対策相談室 「労働基準監督署の調査の種類」より引用
参考文献:厚生労働省 「令和2年度地方労働行政運営方針の策定について」
災害時監査であれば、一定程度がどれくらいかは分かりませんが、労災が(短期間で)頻繁に起こっていなければ大丈夫そうな印象を受けました。
私の時に監査もなかった理由についても納得です。
労災は企業イメージを損なうという印象がありますが、従業員は会社にとって人財であると思います。
従業員が働きやすい環境を整える代わりに、従業員は会社に貢献する。
そんなwin-winの関係が築ける企業が増えることを願っています。